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独り言。

笹沢左保「陰獣の血」。

見合いで結婚した夫は医師で忙しく、寂しさを紛らわすためゴーゴー・スナック(私達の世代でいうところのディスコ。最近の若い人達の世代でいうところのクラブ)を訪れたヒロインは、そこで一人の青年に出会う。

「サタン」のニックネームで呼ばれる、踊りが上手でそのスナックでは人気者である青年は、何故か、スナックの客の他の若い女の子達ではなく、ヒロインに近づいてくる。

実は、サタンの両親は子宝に恵まれず、サタンの母親は嫁ぎ先から「石女」といびられ、大学病院の不妊外来を受診したところ、夫の側に原因があると診断され、第三者の精子の提供を受けてサタンを出産したのだが、今度は嫁ぎ先から「誰ともわからない男の子供を産んだ、ふしだらな嫁」と責められ、耐えかねて自殺していた。

そして、サタンは母を死に追いやった男=精子を提供した第三者に復讐するため、その男を執念で探し、それが当時医学生だったヒロインの夫であることを突き止め、ヒロインの夫に近づくためにヒロインを利用したのだった…

サタンの母親を死に追いやったのは、精子を提供したヒロインの夫ではなく、妻に人工授精を強要しておいて、そのせいで妻が自分の親族から「誰ともわからない男の子供を産んだ、ふしだらな嫁」と責められているのに妻をかばおうとしないサタンの法律上の父親ではないか、と思うが、なにぶん、昔読んだ本なので、記憶誤りがあって内容に違うところがあるかもしれない。

さて。

最近、国内で、早発閉経の女性が、第三者の卵子の提供を受けて妊娠、出産したらしい。

これまで、子宮に問題はないが卵子がない女性が他者の卵子の提供を受ける、という「不妊治療」は、国内では親族や知人からの提供に限られ、第三者の卵子の提供を受けるためには、それを認めている海外に渡航するしかなかったため、「国内の不妊治療の大きな前進」と歓迎する向きもあるようだ。

嫁が、第三者の精子の提供を受けて妊娠し、出産するのは、「誰ともわからない男の子供を産んだ、ふしだらな嫁」と言われても。

嫁が、第三者の卵子の提供を受けて妊娠し、出産するのであれば、昔は、正妻に子供ができなければお妾さんに子供を産ませることは「当たり前」だったのだし、男性側の精子に由来する子供であれば、「誰ともわからない女の子供を産んだ、ふしだらな嫁」とは言われないのだろう。

ところで、「陰獣の血」のヒロインは、孤児で、子供のいない夫婦の養女として、実の両親について知らされずに育てられたのだが、サタンと関わる中で、自分が連続強盗殺人を犯した死刑囚の子だ、という事実(養親が、そのことを知ると娘が悲しみ傷つくだろうと思い、実親について知らせずに育てた、という事実)を知る。

「血の繋がった子」でないとならないのだろうか。

「お腹を痛めて産んだ子」でないとならないのだろうか。

孤児院で子供を貰ってきて育てるのでは駄目なのだろうか。

不妊治療」に関するニュースを目にする度に、そう思ってしまうのだ。

まさに今現在、子供ができなくて嫁ぎ先から「石女」といびられている女性からすれば、

「あなたは、運良く子供を授かれたから、そんなことが言えるのよ!」

ということになってしまうのかもしれないが。

でもねぇ。

嫁ぎ先って、嫁に子供が生まれても、

生まれた子供が女の子ばかりだと「女腹」、

男の子ばかりだと「男の孫しか産めない、女の孫を産めない、片輪者の嫁」、

って、何かと文句をつけてくるものなのよ。